5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」

目次

近年、多焦点眼内レンズが開発され、白内障の手術時に摘出された水晶体の代わりに多焦点眼内レンズを移植することで、遠近の両方が見えやすくなるというレンズが開発されています。

多焦点眼内レンズは、老眼矯正レンズともいわれていて、関心を持つ人も多くなっています。

これまで2焦点レンズ・深度拡張型・3焦点レンズ等様々なレンズが発売されてきましたが、5焦点を有する多焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」が2020年9月から日本でも取り扱いが開始されました。

ここでは、5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」の特徴をメリットとデメリットを含めて説明します。どのような人におすすめのレンズなのかも解説していきますので、多焦点眼内レンズ導入を検討している人や白内障手術のレンズ選びについて知りたい方はぜひ参考にしてください。

5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」とは

5ヶ所に焦点が合う、多焦点眼内レンズIntensity(インテンシティ)は、イスラエルのHanita Lenses社製のレンズで、2019年にヨーロッパの厳しい安全基準をクリアし、「CEマーク」*を取得しています。世界初の5焦点眼内レンズで、日本では2020年9月より自由診療での取り扱いが開始となりました。

実は、イスラエルは世界屈指の機械・科学メーカーなどを多数擁する国で、眼内レンズも非常に良質なものを生産しています。

INTENSITY (インテンシティ)は、多焦点眼内レンズのメリットを最大化して、特有のデメリットが軽減されたバランスの良いレンズです。

*「CEマーク」とは、EU(欧州連合)地域で販売される特定の製品に対して貼付が義務付けられている安全マークです。一方、「CEマーキング」とは、EUの法律で定められた安全基準を満たす製品にCEマークを表示することを指します。

レンズの仕様

インテンシティは光効率を最大限に利用し、最適化された光エネルギーの配分によって遠方、遠中、中間、中近、近方のあらゆる距離で良好な見え方が得られています。

従来の回折型2焦点や3焦点眼内レンズでは使用出来なかった部分を使用可能にした、Hanita社独自のアルゴリズムです。

インテンシティ(Intensity)主な仕様

光学部デザイン 5焦点回折型
焦点距離(ピント) 遠・遠中・中・近中・近 (∞・133cm・80cm・60cm・40cm)
乱視矯正 ◯(強度近視非対応)
ハロー・グレア 少ない
生産国 イスラエル
メーカー Hanita Lenses
矯正範囲 10.0D〜30.0D(0.5Dきざみ)

5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」をおすすめする人

5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」は以下のような方におすすめするレンズです。

  • 見え方の質にこだわりたい方
  • メガネが不要の生活がしたい方
  • 精密な作業や非常に細かい文字を読む機会が少ない方

見え方の質とは、視界品質(Quality of View)のことでコントラスト感度など、目に関する生活の質や満足度を指します。

多焦点眼内レンズは、目に入ってくる光を振り分ける構造によってピントを合わせることができるので、5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」は、見え方の質の改善に期待ができます。

多焦点眼内レンズは、遠近両用眼鏡のような機能を持っています。老眼だけでなく、近視や乱視も同時に矯正が可能です。手術後にメガネが不要になるケースが9割以上にのぼり、ほとんどのシーンでメガネに頼らない生活を送ることが可能です。

しかし、40cm以下の近方での視力低下は避けられないため、手元の精密な作業や細かい文字を読むお仕事やその機会が多い方にはおすすめできません。

5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」の特徴

5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」の主な特徴は以下の4点があげられます。

  1. 遠方から近方までスムーズに焦点が合う
  2. ハロー・グレアを抑制
  3. 夜間でも見え方が良好
  4. 光学的エネルギーロスの抑制による「見え方の質」の向上

遠方から近方までスムーズに焦点が合う

遠方から近方まで5焦点スムーズにピント調整できることは、このIntensity(インテンシティ)の最大の特徴です。3焦点眼内レンズの「遠方」「中間」「近方」に加え、従来のレンズが不得意としていた「近中(近方〜中間)」「遠中(中間〜遠方)」までの5箇所で焦点が合うレンズです。

日常生活において必要な焦点距離を幅広く、なおかつ高い精度でカバーすることができ、快適に裸眼での生活を送ることが可能になります。また、遠方から40cmの近距離で視力の落ち込みがほとんどなく、一貫してスムーズに、見ることができます。

ハロー・グレアを抑制

多焦点特有の見えづらさの原因となるハローやグレア、スターバストなどの異常光視症も非常に少ないと言われています。

ハロー・グレアとは、夜間や暗い場所での光がにじんで見える、まぶしく見える不具合のことを指します。多焦点眼内レンズの最大の欠点が、このハロー・グレアの起こりやすさです。

「Dynamic light utilization」テクノロジーという独自の回折構造によって、光エネルギーのロスを6.5%まで抑えているため、夜間の光のにじみやまぶしさ(ハロー・グレア)が従来の回折型3焦点と比較して軽減されています。

夜間の外出や運転が多い人にとって、新しい選択肢となります。

これまで多焦点眼内レンズで出やすいとされていたハロー等、光の ”にじみ” がより少なくなることで、自然な見え方が可能となりました。

夜間でも見え方が良好

従来の多焦点眼内レンズの弱点として、夜間に視力が落ち込む傾向がありました。暗いところでは瞳孔径(黒目の大きさ)が変わってしまうため、多焦点眼内レンズの光配分機能が適切に働かないためです。

しかし、Intensity(インテンシティ)は、瞳孔径の大きさごとに光配分が適切に機能するように設計されていることから、暗所や夜間でも良好な視界を得ることができます。

夜間や暗い場所では瞳孔径が小さくなりますが、見え方は違和感なく良好です。

光学的エネルギーロスの抑制による「見え方の質」の向上

フーリエ変換に基づいて設計された回折構造であるDynamic Light Utilization(DLU)という独自のメカニズムを使用することで、光効率を最大化しており、光エネルギーのロスを6.5%まで低減しています。

よく比較されるA社の3焦点レンズが12%、B社の3焦点レンズが14%ですので下のグラフのように遠方から40cmまで視力の落ち込みがほとんどありません。

5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」の見え方

5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)は、焦点眼内レンズによって、日常生活のあらゆるシーンでメガネに頼ることなく良好な見え方を実現することができるようになりました。メガネからの解放は、QOL(Quality of Life-生活の質)を向上させることに繋がります。

英語の「intensity」が「強さ」や「鮮やかさ」を意味するように、まさに他の眼内レンズと比較して「強みが多い」ところや、「鮮やかな見え方を可能にする」といったところが大きな利点といえます。

また、実際にIntensity(インテンシティ)での手術を受けた人が、日々の生活の中での見え方の満足度が高いところも特徴です。

日々の活動の満足度

画像引用元:Hanita lenses公式サイト・パンフレットより

https://iol.hanitalenses.com/wp-content/uploads/Group-1154-1.png

5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」のデメリット

多くのメリットがあるIntensity(インテンシティ)5焦点眼内レンズですが、どんな人にも向いている、デメリットがゼロ、というわけではありません。

以下のようなデメリットや向いていない患者さまもあります。ご自身の生活スタイルや優先したいことに合わせたレンズ選びをすることが大切です。

  • 費用が高額
  • 強度近視の方は適応外になる場合がある
  • 40cm以下の近方での視力低下

費用が高額

他の多焦点眼内レンズに比べても費用が高額で、完全自己負担です。(保険適用はありません)海外からの輸入となるため納期に時間がかかることもあります。

強度近視の方は適応外になる場合がある

強度近視(-6.00D以上)の場合は対応度数がなく適応外となる場合があります。

40cm以下の近方での視力低下

40cm以下の近方での視力低下は避けられないレンズです。そのため、細かい文字を読む機会が多い人や、手元の精密な作業をする人には向いていません。

5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」の費用

5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」は選定療養適用外**のため、自由診療、完全自己負担になります。

医療費控除***の対象になりますので、領収書は失くさずに保管してください。

Intensity(インテンシティ) 乱視なしの場合 561,000円(税込)
Intensity(インテンシティ) 乱視ありの場合 638,000円(税込)

※片眼の費用です。
※※上記費用に加えて、手術費用(保険診療分)が別途かかります。

選定療養適用外**について

白内障手術で挿入するレンズは、「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」のどちらかになります。

単焦点眼内レンズは、保険適応の白内障手術で用いる医療用レンズです。近方、遠方、中間距離など、患者様のご希望で、1箇所の距離に焦点を合わせます。合わせた焦点距離以外をしっかり見たい場合には、眼鏡が必要です。基本的に単焦点眼内レンズを使用した白内障手術は、保険適用の対象になります。

一方、多焦点眼内レンズは、近方、遠方、中間距離のうち2箇所、または3箇所や5箇所に焦点を合わせられるレンズです。単焦点眼内レンズと比べて保険適用にはなりませんが、術後にメガネやコンタクトの装用を減らして生活を送ることが出来る、画期的な医療用レンズです。

それぞれ特徴・利点・メリットが異なるので、患者様のご希望・検査・問診を経て医師と患者様で決めます。

多焦点眼内レンズ手術をご希望の際は、患者様に選定療養制度を利用していただけます。

選定療養制度とは、白内障手術の費用は保険適用となり、多焦点眼内レンズのレンズ代のみ自己負担になる制度です。

本来、手術費用とレンズ費用全て自己負担となる多焦点眼内レンズ手術が、レンズ代のみ自己負担となりますので、患者様のご負担が減少します。

白内障手術は単焦点眼内レンズを使用する場合は保険適用となりますが、多焦点眼内レンズは自由診療に該当します。

しかし、一般的に自由診療は費用全額自己負担になりますが、特定の多焦点眼内レンズを使用した白内障手術は「選定療養」の対象となります。

その場合、レンズ代は自己負担になりますが、手術費用は保険適用が認められます。

 

***その年の1月1日から12月31日までの間に自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額(下記「医療費控除の対象となる金額」参照))の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。

(国税庁WEBサイトより引用 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

まとめ

5焦点眼内レンズのIntensity(インテンシティ)は、独自の技術によって他の眼内レンズにはない特性を持っています。

乱視も軽減できる乱視治療型タイプのIntensity(インテンシティ)も発売されており、より選択肢の幅が広がっています。

Intensity(インテンシティ)は、多焦点眼内レンズで享受できるメリットの最大化、デメリットの大幅な軽減により、バランス性能に優れた眼内レンズです。

白内障手術後も「見え方の質にこだわりたい」、「メガネが不要の生活がしたい」「精密な作業や非常に細かい文字を読む機会が少なくアクティブな生活スタイルが中心」といった患者さまへおすすめです。

しかし、患者さまによっては他の眼内レンズの方がQOL(生活の質)を高めることができる場合もあります。自分のライフスタイルに合ったものを選ぶためにも、それぞれの眼内レンズの特徴やデメリットについてもよく理解することが大切です。

白内障の手術をご検討中の方や術後の見え方について詳しく知りたい方、眼内レンズ選びにお困りの方はぜひ当院へご相談ください。

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