子供の斜視は斜視の状態だと両目でものを見ていない
大人になってなった斜視は通常ものが二つに見えてしまい複視に苦しみます。しかし子供の時からの斜視は、ものが二つに見えると不都合なので、頭で片方の目の情報だけを資格情報として処理するようになります。それぞれの目が1.0ずつあっても、日常的にはどちらか得意な方だけで見ているという状況です。そのため、遠近感・立体感がうまく取れない状態となります。
訓練で目の位置のコントロールが良くなったのはわかるけど、両目で見る力は親からは見えない
眼科に通って訓練をして、視力(矯正視力)が上がりましたね、という話は分かりやすいと思いますが、両目で見る力についてはイメージが湧きづらいんだろうな、と説明していて思うことがよくあります。
両目でものを見る力
両目でものを見る力は弱い方から
- 同時視
- 融像
- 立体視
があります。それぞれ近くのものと遠くのものがあります。
例えば遠くを見るときに目の位置が外れやすい外斜視では、近くの立体感例えば針に糸を通す・ピンセットで小さい破片をつまんびビーカーに入れる・お箸で豆をつまむなどは得意でも、遠くの立体感、階段を下りる・車の車庫入れ・キャッチボールが苦手だったりします。上を見たときに目の位置が外れやすいV型の外斜視ではバトミントンなど上を見たときの立体感が苦手で、刺しゅうなど下目線の時の立体感は得意ということもあります。
同時視とは
右目の情報と左目の情報が頭の中で同時に見えている状態です。同時視がないとはどういう状況かというと、それは交代視(右目だけ左目だけの情報の処理を交互にできる=片目ずつで見る)ならできる、もしくは抑制といって片方の目の情報は頭の中では視覚処理に参加させていない、または左右で視力差があるなどの理由で優位眼だけでものを見ている状態をいいます。同時視があることにより右の視野・左の視野が一つにまとまり広い視野となります。馬は右を見る右目、左を見る左目の情報を同時視により一つにまとめ360度に近い視野を確保しているといわれています。例えば当院ではシノプト(大型弱視鏡)という装置で右目に車左目に車庫を見せ、車庫の中に車が入って見えるか、というような検査で同時視がある・ない・弱い・素早い交代視を行っているなどを判断します。同時視は両眼視の一番基礎の力になります。ない場合は視力を上げる訓練を行い同時視訓練をします。
融像とは
右で見たものと左目で見たものは当然視野が異なります(鼻側がそれぞれ狭い)。正面の右の視野・左の視野が重なる部分(注視している部分)は融像という力により一つに見えます。シノプトという機械で左右の見るものをちょっと変えて、例えば右目に花を持っているけどしっぽがないうさぎ、左目に尻尾はあるけど花は持っていない同じ形のウサギを見せるとうまく融像できれば花を持ちしっぽのあるウサギが1匹だけ見えます。右目に見えているものと左目に見えているものを少しずつずらしてもしばらくは一つにまとめてみることができます。これが融像です。この力が弱いと目の位置がずれやすくなります。眼科では融像の幅を測り、力の弱い子は融像訓練をします。
立体視とは
立体的にものを見る力・距離感をつかむ力です。両目でものを見ると微妙に左右の目の距離がある分だけ見え方に差があります。それを一つにまとめてみることで奥行き感をとっています。遠くの距離感が苦手だと特殊な運転免許が取れないなどという職業選択上の制限があることもあります。立体視訓練もいろいろあります。
川越眼科手術とまぶたのクリニックの斜視・弱視訓練は両眼視機能を重視
別のページにも記載してありますが、斜視は両眼視を大切にする診療の考え方と見た目がよければまあいいんじゃない(目の位置がずれやすいという基本的な性質は治療してもなくならないから)という感え方とあり患者さんは行った眼科によっては別の方針を聞いて混乱することもあります。
川越眼科手術とまぶたのクリニックではつけられる両眼視は獲得できる時期が限られる(8歳程度まで)なので、伸ばせる能力はできるだけ伸ばす方針で見ています。目の状況により細かい立体視を獲得するのは難しい子もいて、それはその子なりにより良い能力をつけられるように個人個人の状況を勘案し訓練を行います。抑制除去訓練などは8歳から11歳までと訓練を行うのに適した時期(本人の理解力による)というものもあります。一人一人訓練メニューは異なりますので気になる方は受診してください。