甲状腺眼症
甲状腺眼症とは、眼球周りの脂肪や眼を動かす筋肉の中にある甲状腺に関係のある抗体が標的となって炎症が起こる眼疾患です。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や甲状腺機能低下症(橋本病)に合併して起こることが一般的ですが、甲状腺機能が正常な場合でも起こることがあります。
目次
甲状腺眼症の症状
甲状腺眼症の主な症状について紹介します。
甲状腺眼症の特徴として、午前中に強い症状が出やすい傾向があります。
- まぶたが腫れる
- まぶたがつり上がる
- 目が充血する
- 眼球の奥が痛む
- 眼球が突出してくる
- モノが二重に見える
- 視力低下
など
甲状腺眼症の原因・メカニズム
眼球が納まっている部位を眼窩といい、この部位は前方(眼球方面)を除き、頭蓋骨によって囲まれている=周囲を固い骨が囲まれている状態にあります。
外眼筋や脂肪が腫れると眼窩の中は窮屈の状態=「眼窩内圧が高まる」になるため、その圧力を逃すために主に前方にあたる眼球へと影響を及ぼします。腫れた外眼筋や脂肪に押し出されるような形で眼球突出が生じるわけです。
また炎症によって外眼筋に傷跡が残ることによって筋肉の特性である「しなやかさ」を失い、症状が起きている目と反対側の目が正常に働いている場合には両目の視野に左右差が生まれ、モノが二重に見えます。
甲状腺の治療
甲状腺眼症を増悪させる3大因子として「喫煙」「寝不足」「ストレス」が挙げられます。つまり治療の第一歩は、生活習慣の改善となります。特に喫煙は後述のステロイド治療の効果を落とす可能性がある上、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の悪化に繋がりますので喫煙者はまず禁煙を心がけましょう。
ステロイド治療
甲状腺眼症の治療の基本であり、眼窩内の炎症の改善や浮腫(組織に生じるむくみ)の改善が期待できます。
放射線治療
炎症反応に対してステロイド薬のみでの改善が難しい場合に検討します。外眼筋や眼窩脂肪組織に放射線を当て改善を図ります。
斜視手術
炎症が落ち着いた後も後遺症として斜視が残り、複視(モノが二重に見える症状)が強い場合には、斜視手術を検討します。
眼窩減圧術
甲状腺眼症によって外眼筋が視神経を圧迫している場合や眼球突出が著しい場合には、目の周りを囲んでいる骨の一部を削ることによって、眼窩内の圧力の軽減や眼球突出を軽減するための手術を行うことがあります。
理事長 本間 理加 医師