網膜硝子体疾患

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網膜と硝子体

網膜とは、眼球内の裏側(眼底)に接している薄い膜で、カメラに例えるとフィルムのような役割を担っています。
人の「モノを見る」という行為は、表面の「角膜」やレンズの役割を持つ「水晶体」を経由し眼内に入った光を網膜が電気信号に変換し、「視神経」を通じて脳に伝えることで、認識可能になっています。
このように目から得た情報を脳に伝達する役割の網膜には、「明暗」や「色彩」を感じることのできる「視細胞」が集まっており、視覚にとって重要な部位です。
また、網膜の中心部分にあたる「黄斑」は視細胞が密集しており、網膜内で最も重要な部分になります。
網膜に関する疾患は、視力や視野に影響を与え、重篤化すると失明に至るケースもあります。
実際、日本の失明原因上位のほとんどが網膜疾患です。
網膜の疾患に対する治療方法には「レーザー治療」や「硝子体注射」、「網膜硝子体手術」などが挙げられます。
中でも「網膜硝子体手術」は「ティッシュペーパーからガムを剥がすような手術」と例えられ、眼科領域の中でも最も難易度の高い手術の一つです。
当院でも日帰りで網膜硝子体手術を実施しており、手術では豊富な眼科手術の経験と実績を持つ院長が全て執刀を行なっております。
※入院・安静が必要な場合は連携施設・大学病院にご紹介させていただきます。

目次

加齢性黄斑変性

加齢黄斑変性と「黄斑部」が加齢に伴い、出血やダメージなどの障害が発生することで、視力低下を引き起こす病気です。
国内では聞き馴染みのない病気と感じる方が多いかもしれないですが、欧米では失明原因の第1位です。
実際、日本でも失明原因の第4位を占めており、高齢者人口の増加や欧米の食文化の輸入などから、増加傾向にあります。
細かな物や色の識別を行う上で重要な役割を果たす「黄斑部」の異常により、「視界の中心部の歪み」や「視野の真ん中が霞む」といった初期症状が現れます。
また、進行性の病気である加齢性黄斑変性は症状が進むことで、視界の中心が欠ける「中心暗転(視野欠損)」が起こり、視力に大きく支障をきたします。
加齢黄斑変性のタイプには主に「滲出型黄斑変性(しんしゅつがたおうはんへんせい)」と「萎縮型黄斑変性(いしゅくがたおうはんへんせい)」の2種類があります。

萎縮型黄斑変性(いしゅくがたおうはんへんせい)

加齢によって黄斑部の細胞が萎縮してしまうことが原因です。
萎縮型は症状の進行が緩やかなことが特徴です。
現在の医療技術では有効な治療法がなく経過観察がメインとなりますが、滲出型へ転換した場合は治療が必要になるので、定期的な検診が必要となります。

滲出型黄斑変性(しんしゅつがたおうはんへんせい)

網膜の下部に「新生血管」という異常血管の出現が原因となります。
この血管は非常に脆く、この血管が何らかの拍子に破れ、漏れ出た血液成分が網膜内に溜まることで視細胞に影響を及ぼします。
放置することで重篤な視力障害を引き起こすので、以下のような治療法が必要となります。

光線力学療法(PDT)

「ビスダイン」という光に反応する薬剤を静脈から注射し、目に光を当てて新生血管を特定します。
新生血管の閉塞を目的に、特定した新生血管に低出力のレーザーを照射します。

レーザー光凝固術

新生血管が黄斑に及んでない場合は、高出力のレーザーを照射し、新生血管を凝固(焼き固める)ことで、進行を抑えます。

硝子体注射(抗VEGF治療)

新生血管の成長や働きを助長させる「VEGF(血管内皮増殖因子)」という物質に対し、「抗VEGF薬」という薬剤を目から注射で投与することで、新生血管を鎮静化させます

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症とは、網膜内の多数の毛細血管が高血糖によって血流障害を起こし、網膜に酸素や栄養が行き届かないことによって、視力に支障をきたす病気です。
糖尿病網膜症は、「糖尿病腎症」や「糖尿病神経症」と合わせて糖尿病三大合併症と言われ、国内の失明原因第3位の病気です。
進行性の病気で、初期の段階では自覚症状がほとんどないため、発見が遅れることで重篤化し、失明に至ることが多くなっています。
糖尿病網膜症は進行度合いは「単純」「増殖前」「増殖」の以下3段階に分類され、視力低下を引き起こす「糖尿病黄斑浮腫」はすべての時期で発生する可能性があります。

単純糖尿病網膜症

糖尿病網膜症の初期段階で、自覚症状がない場合がほとんどです。
眼底検査を行うと、血管の瘤(毛細血管瘤)やわずかな出血(点状・斑状出血)、血管から漏出したタンパク質や脂質によるシミの形成(硬性白斑:こうせいはくはん)などの異常が確認されます。
この段階では、血糖値にのコントロールによって改善の余地があるため、経過観察をメインに定期的な眼底検査を行います。

増殖前糖尿病網膜症

単純糖尿病網膜症から進行すると、眼底出血に加え、血管が詰まって「虚血変化(細胞に酸素や栄養が行き届かない状態)」がおこります。
この段階でも自覚症状がない場合がほとんどです。
しかし、酸素や栄養を届けるための「新生血管」という異常血管を作る準備を始め、これが増殖糖尿病網膜症に移行する前兆になるので、レーザー治療を行って改善する必要があります。

増殖糖尿病網膜症

進行が進んだ重篤な糖尿病網膜症で、視力に大きく支障をきたします。
高血糖によって血管が詰まることで血流障害を起こし、網膜の細胞に酸素や栄養が十分に行き届かなくなります。
この状態を改善しようと新しい血管(新生血管)が作られます。
しかし、新生血管は異常な血管で非常に脆く、何かの拍子に破れて眼内に広く出血(硝子体出血)を起こします。
出血が「硝子体(眼球内を満たす透明のゼリー状の組織)」に及ぶと、視力の低下だけでなく、視野に浮遊物が現れる「飛蚊症」が発生します。
また、新生血管の周りには「増殖膜」が形成され、これが網膜を引っ張ることで「牽引性網膜剥離」も合併することがあります。
増殖糖尿病網膜症はレーザー治療で新生血管を抑制するだけでなく「硝子体手術」が必要なケースがあります。

網膜剥離

網膜剥離とは、眼球内の裏側に接している「網膜」が、何かしらの原因で徐々に剥がれてしまい(剥離)、視力低下や視野に障害をきたす病気です。
進行性の疾患ですが、剥離事態には痛みを感じることはなく、放置することにより最終的には失明に至るケースもあるため、早期発見と適切な処置が大切です。
網膜剥離には主に「裂孔原生網膜剥離(れっこうげんせいもうまくはくり)」「非裂孔原生網膜剥離(ひれっこうげんせいもうまくはくり)」の2種類があります。

裂孔原生網膜剥離

網膜に何かしら理由によって穴や亀裂が生じ、そこへ老化により液状化した硝子体が流れ込むことによって、網膜が浮いてしまったり剥がれてしまう網膜剥離です。
網膜剥離の中で約8割が裂孔原生網膜剥離です。

非裂孔原生網膜剥離

糖尿病網膜症によって形成された増殖膜や、加齢に伴って萎縮している硝子体によって、網膜が引っ張られることで網膜剥離が引き起こされます。
その他に「ぶどう膜炎」などの病気が原因となるケースもあります。

症状

初期症状としては、視界に虫のような浮遊物がチラつく「飛蚊症」や、光が当たってもないのに眩しく感じる「光視症」などがみられます。
進行につれて視力低下や視野の狭小などが起こり、さらに網膜の中心部である黄斑部まで剥離が進むことで、急激な視力低下を引き起こします。

治療法

網膜に穴や亀裂が生じている初期の段階では、「網膜凝固術(レーザー治療)」によって、穴や亀裂を防ぐことで対処できますが、すでに剥離が起こっている状態の場合は手術が必要となります。
症状や進行度合いによって「強膜バックリング手術(網膜復位術)」や「硝子体手術」を行います。

強膜バックリング手術(網膜復位術)

網膜の外側の「強膜」へシリコンスポンジを縫い付けることで、硝子体の牽引力を弱めたり、剥離の原因となる穴や亀裂を塞ぐ手術方法です。

硝子体手術

硝子体を処理した後、眼球内にガスを入れ、ガスの膨張力で網膜を押さえることで、剥離の原因となる穴や亀裂を塞ぐ手術方法です。

黄斑円孔

人が「モノを見る」時に重要な役割を担う網膜の中心部で、視細胞が密集する「黄斑部」に丸い穴(円孔)が開くことで、視野に支障をきたす疾患です。
網膜に接している硝子体(眼球内を満たすゼリー状物質)が加齢に伴って縮んでいき、この収縮の際に黄斑を引っ張って穴や亀裂を生じることが原因となります。
加齢が原因の1つとなることから、60代で発症するケースが最も多いです。
円孔が開き始めた初期の段階から視力の低下や、モノが歪んで見える「変視性」が現れます。
徐々に円孔が大きくなっていく進行性の疾患で、進行すると視野の真ん中が欠けたような見え方(中心暗転)になります。
治療方法は「網膜硝子体手術」が第一選択となります。
手術では円孔の原因となった硝子体を取り除き、その代わりに「医療用ガス」を充填します。
ガスの膨張力によって円孔を塞ぐことが目的ですので、ガスの膨張力を適切に与えるため、術後の1日〜2週間ほどは「うつむき姿勢」を取っていただきます。

黄斑前膜

「黄斑上膜」や「セロファン黄斑症」とも呼ばれている「黄斑前膜」は、網膜の中でも重要な役割を持つ「黄斑部」の表面にうすい膜(前膜)が張ることで、黄斑部内の「視細胞」の機能が阻害される病気です。
眼球の形状を保つためのゼリー状の物質「硝子体」が加齢に伴い縮んでいく際に、網膜の表面に硝子体の細胞が残ることがあり、これが増殖することで膜を形成することが原因です。
この病気は進行速度が緩やかで失明の心配がほとんどないです。そのため自覚症状がない軽度の場合、定期検査と経過観察を行います。
進行すると前膜が収縮し、網膜が浮腫むことから、モノの歪みや視力低下を引き起こします。
これらの症状が現れた際は「網膜硝子体手術」を検討しなければなりません。
網膜硝子体手術では、硝子体を処理した後、網膜の前膜をピンセットによって慎重に摘出します。
同様に加齢が原因となる白内障が進行している場合には、硝子体手術と白内障手術を同時に行うことがあります。
黄斑前膜と網膜が強く癒着している場合があり、この状態では前膜を剥がす際に黄斑円孔が発生する恐れがあります。
そのため、硝子体手術終了時には、円孔を塞ぐことを目的に、硝子体のあった場所にガスを入れることがあります。

網膜静脈閉塞症

網膜静脈閉塞症は、網膜の静脈が閉塞することによって、血流障害が生じ、視力に障害をきたす疾患です。
静脈は網膜全体に枝分かれ状に広がっており、眼球の後方にかけて「中心静脈」という1本の血管に集束しています。
この中心静脈が閉塞した場合は「網膜中心静脈閉塞症」、枝分かれした細い静脈が閉塞した場合は「網膜静脈分枝閉塞症」といいます。
血流障害によって、網膜の中心の重要部分である「黄斑部」で血管に網膜浮腫(むくみ)や出血が発生すると、視力低下を引き起こします。
主な原因としては高血圧による動脈硬化で、この動脈が静脈に負荷をかけることによって、静脈内の血液が固まって血管が詰まります。
静脈閉塞の発生箇所によって症状や視力低下の度合いが異なり、無症状から重篤な症状まで様々です。
血流障害が悪化すると、網膜の細胞に酸素や栄養が十分に行き届かなくなり、この状態を改善するための新しい血管(新生血管)が生み出されます。
しかし、この新生血管は非常に脆い異常血管で、破れた場合は眼内に広く出血を引き起こし、合併症の原因となります。
また、新生血管が眼圧を調整する器官である「隅角」にまで発生すると「新生血管緑内障」が発症し、失明に至る可能性もあります。
網膜静脈閉塞症の主な治療方法は、黄斑部の浮腫の改善や新生血管の沈静化を目的として、硝子体注射(抗VEGF治療)を行います。

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この記事の監修者
院長先生の写真
医療法人七彩
理事長 本間 理加 医師
これまで大学病院に長く従事し、白内障手術をはじめとして、網膜硝子体手術、緑内障手術、眼瞼下垂、角膜移植など様々な眼科手術に豊富な執刀実績を持ちます。現在医療法人七彩の理事長として川越エリアを中心として手術に特化した眼科クリニックを2医院展開しています。

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