クラレオンパンオプティクス(Clareon PanOptix)
「クラレオンパンオプティクス(Clareon PanOptix)」は、2019年に国内で初めて厚生労働省からの認可を受けた選定療養対応の3焦点眼内レンズ「 パンオプティクス(PanOptix)」がより進化した多焦点眼内レンズです。
パンオプティクスとの違いは、レンズに使用している素材とエッジデザインで、構造自体は大きく変わりません。
パンオプティクスの特徴はそのままに、よりクリアで良好な視界を長期間維持できるようになりました。
本記事では、クラレオンパンオプティクスの特徴や、同じ3焦点眼内レンズ「ファインビジョン」との違いについて解説します。
目次
クラレオンパンオプティクス(Clareon PanOptix)とは
クラレオンパンオプティクスは、アルコン社が開発した3焦点眼内レンズです。
2019年に国内で初めて認可を受けた3焦点眼内レンズであるパンオプティクスがさらに進化したモデルとして、2022年より販売が開始されました。
ここではクラレオンパンオプティクスのレンズの仕様や2焦点眼内レンズとの違いについて解説します。
この記事では、なみだ目(流涙症)になる原因やなみだ目に関する病気、治療法について解説します。
レンズの仕様
クラレオンパンオプティクスは、前モデルであるパンオプティクスと同様、3焦点眼内レンズです。
遠方、中間距離、近方の3箇所に焦点を設け、日常生活のあらゆるシーンにおいて自然でクリアな見え方が期待できます。
前モデル・パンオプティクスとの大きな違いは、眼内レンズの素材として、より高品質な「クラレオン(Clareon)」を採用したことです。
素材のリニューアルによって、レンズ内部に水泡が発生したり、表面に細かな水滴ができたりする現象を抑えられるようになったため、手術後は長期間クリアな視界を維持できます。
さらに、白内障手術後に水晶体嚢の後嚢(眼内レンズを挿入する部位)が濁る後発白内障の発症リスクも抑制できます。
紫クラレオンは外線などの吸収性に優れた素材でもあるため、網膜保護効果があり、加齢黄斑変性など、紫外線を原因とする疾患の予防効果も期待できます。
また、新たに採用されたエッジデザインにより、手術後のエッジグレア(暗いところで、弓状、または放射状の光が見えること)の発生も低減されました。
3焦点眼内レンズと2焦点眼内レンズの見え方の違い
3焦点眼内レンズと2焦点眼内レンズの最も大きな違いは、中間距離に対応しているかどうか、という点です。
2焦点眼内レンズは、遠方と近方の2ヵ所にしか焦点を合わせられないため、テレビを見たり、パソコン作業をしたりするなど、60cm程度の中間距離の対象には見にくさを感じざるをえません。
一方、3焦点眼内レンズは、遠方、中間距離、近方の3ヵ所に焦点を合わせられるため、中間距離の対象もしっかり視界に捉えられます。
日常生活のどんなシーンにおいても、快適な視界を維持しやすいのです。
ただし、3焦点眼内レンズは、焦点数が増える分、目に入ってきた光をより分散させてしまいます。
その分、2焦点眼内レンズよりもコントラスト感度が低下しやすく、手元を見る際にはより明るい光源が必要になったり、ハロー・グレア現象(暗い場所で光の見え方の不具合が起こること)が起こりやすくなったりします。
クラレオンパンオプティクス(Clareon PanOptix)の特徴
クラレオンパンオプティクスは、3焦点眼内レンズパンオプティクスが進化したモデルです。
眼内レンズの素材に新素材、クラレオンを採用したこと、エッジデザインをリニューアルしたことで、どんなシーンでもより快適に過ごせるようになりました。
具体的には、次のような特徴が挙げられます。
眼鏡を必要とする場面が大幅に少なくなる
クラレオンパンオプティクスは3焦点眼内レンズであり、遠方(5m以遠)、中間距離(60cm)、近方(40cm)の全てで、視界が鮮明になります。
日常生活のほとんどのシーンで眼鏡をかけることなく、良好な見え方が期待できるでしょう。
読書やスマートフォンの操作などの手元を見るシーンや車の運転、屋外での活動など遠くを見渡す必要がある場合の他、パソコン作業や料理など中間距離を見ながら作業をするときでも、眼鏡なしでストレスなく過ごせます。
元々、近視や遠視であった方も、眼内レンズの使用により、症状を軽減させられるので、手術前よりも眼鏡を必要とするシーンが減ります。
老眼も矯正できるため、ほとんど裸眼で生活できる方も少なくありません。
中間から近方にかけてスムーズなピント調整が可能
特に80cmの中間距離から40cm程度の手元を見る際に、スムーズなピント調整ができるのもクラレオンパンオプティクスの特徴です。
これは、独自の光学テクノロジーによるもので、遠方(5m以遠)、中間距離(60cm)、近方(40cm)の3つの焦点の他に、従来の3焦点眼内レンズの中間距離である80cmの距離にも焦点をもたせてからそれを消し、他の距離への光の配分を増やしたことによります。
特に40cmの近方から80cmの中間距離にかけて違和感なく焦点を移動させられます。
継ぎ目のない焦点移行ができることにより、常に自然で快適な見え方が期待できるので、目も疲れにくく、長時間の作業もストレスなく行えるでしょう。
見え方の質を高くする光のロスが少ない構造
一般的に眼内レンズは、目に入ってきた光をそれぞれの焦点に振り分けるように作られているものです。
そのため、焦点が増えるほど光のロスも増えてしまい、通常の3焦点眼内レンズの場合、光の損失率は13〜18%といわれています。
しかし、パンオプティクスは、効率よく光エネルギーを利用できるよう設計されており、損失となる光は、一般的な3焦点眼内レンズよりも低い12%に抑えられています。
その結果、コントラスト感度の低下を防ぐことができ、より鮮明に見えるのです。
周囲の明るさによる影響が少ない
本来、人間は瞳孔を広げたり縮めたりすることで、目に入る光の量を調整します。
しかし、眼内レンズを入れると、元の水晶体とは調整の仕組みが変わるため、完全に同じようには機能しません。
レンズの構造によって各焦点に光が配分されるようにもなるため、見え方の良し悪しは周囲の明るさに依存するようになります。
特に薄暗く、光が少ない環境では手元が見にくく感じられるでしょう。
しかし、パンオプティクスは、レンズ前面の中心部にある回折領域と呼ばれる部分を4.5mmとすることで、瞳孔の開き具合に影響されず、光の量を調整できるよう設計されているのが特徴です。
このようなデザインにより、周囲の明るさに左右されず、安定した視界を維持できます。
後発白内障の発症リスクの抑制
患者様の中には、白内障手術後に「後発白内障」を発症する方もいらっしゃいます。
これは、眼内レンズを支える水晶体嚢の後嚢が濁るために、再び視界がぼやけてしまう症状です。
クラレオンパンオプティクスは、独自の技術によって、後発白内障発症のリスクを抑えるよう設計されています。
さらに、レンズ素材に紫外線や青色光を吸収する素材、クラレオン の採用で、網膜の保護効果も見込めます。
加齢黄斑変性など、紫外線を原因とする病気の予防も期待できるのです。
クラレオンパンオプティクスを選ぶことで、術後の再治療のリスクを減らし、長期間にわたってクリアな視界を維持しやすくなります。
ファインビジョンとの違い
ファインビジョン(FINE VISION)は、パンオプティクスと同様、3焦点眼内レンズです。
2023年に厚生労働省の認可を受け、選定療養の対象となりました。
両レンズの違いをまとめると、次のようになります。
クラレオンパンオプティクス | ファインビジョン | |
種別 | 回折型 | 回折型 |
焦点の数 | 3点 | 3点 |
遠方の見え方 | 良好 | 良好 |
中間距離の見え方 | 良好 | やや劣る |
近方の見え方 | 良好 | 良好※暗所はやや見にくい |
乱視矯正 | 可能 | 可能 |
ハローグレア | 少ない | 少ない |
光のロス | 12% | 14% |
両レンズとも、3焦点眼内レンズで、選定療養の対象という点において共通し、どちらを選択しても、それほど大きな違いはありません。
ただし、中間距離の見え方については少々差があり、ファインビジョンの方がやや劣るといえます。
特にスマートフォンからパソコンを見るなど、近方から中間距離へ視点を移動させることが多い方は、クラレオンパンオプティクスの方が快適に過ごせるでしょう。
クラレオンパンオプティクス(Clareon PanOptix)の費用
クラレオンパンオプティクスの費用は以下の通りです。選定療養の対象になります。
クラレオンパンオプティクス | |
---|---|
クラレオンパンオプティクス(乱視用) |
上記は片眼の費用です。加えて、別途手術費用がかかります。
まとめ
クラレオンパンオプティクスは、3焦点眼内レンズ「パンオプティクス」の進化版です。
パンオプティクスと同様、遠方・中間・近方の3つの焦点を持ち、日常生活のほとんどの場面で良好な視界を手に入れられること、特に中間から近方にかけてはスムーズなピント調整ができること、光のロスが少なく、暗所でも見やすいこと、といった特徴があります。
さらに、より高品質な素材を採用したことで、クリアな視界を長期間維持できるようになり、後発白内障などの疾患のリスクも抑えられるようになりました。
ただし、クラレオンパンオプティクスが全ての患者様に撮ってベストなレンズとは限りません。
眼内レンズには、他にも沢山の種類があり、どれを採用するのがベストかは、患者様それぞれのライフスタイルや重視されるポイントによります。
手術後に後悔しないためにも、それぞれの特徴を十分に理解し、医師とよく相談した上で、決めることが大切です。
当院では、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術の実績が豊富な医師をはじめ、知識と経験を十分に備えたスタッフが複数名在籍しております。
患者様お一人おひとりのお話を丁寧に伺ったうえで、ご自身に合ったレンズをご提案させていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。
また、遠方にお住まいの方向けに、無料LINE相談も承っております。
3焦点眼内レンズによる白内障手術をご検討中の方や眼内レンズの選択でお困りの方はぜひご活用ください。

理事長 本間 理加 医師
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