多種多様な眼内レンズ、どれが良いの?
眼内レンズの種類・選び方について

多種多様な眼内レンズの中でどれが良い?-眼内レンズの種類・選び方について|川越眼科手術とまぶたのクリニック

白内障手術では、目の中でレンズの役割を担っている水晶体を摘出し、代わりに人工のレンズ「眼内レンズ(単焦点・多焦点眼内レンズ)」を挿入します。
現在普及している柔らかい素材の眼内レンズが1997年に登場して以来、高齢化社会への移行も相まって国内の眼内レンズの使用数は年々上がり続けています。
眼内レンズの需要が高まったことで新しいレンズの開発が進んだことで、現在では多種多少なものが登場し、患者様のライフスタイルに合わせた眼内レンズを選ぶことができます。
一方、種類が増えた分「自身に合う眼内レンズ選びが難しい」という患者さまも多くなりました。
人生で一度きりの白内障手術で、レンズ選びで術後の見え方の後悔をしないためにも、患者さまそれぞれの生活スタイルに合う眼内レンズを慎重に検討することが重要です。
今回は白内障手術に対して豊富な執刀経験を持ち、それぞれの種類の眼内レンズに精通した当院院長本間医師監修のもと、眼内レンズの種類やそれぞれのレンズの特性について解説します。

目次

眼内レンズとは

眼内レンズとは、白く濁った水晶体を白内障手術で摘出した後に、ピント調整機能を担っていた水晶の代わりに挿入する人工のレンズです。
眼内レンズで本来の水晶体の働きを完全に補うことはできず、眼内レンズの種類によって白内障手術後の見え方・ライフスタイルに大きく影響が現れます。
眼内レンズは円形で6mmほどの大きさの本体部分と、目の中でレンズがズレないように固定する支持部によって構成されています。
本体部分は「光学部」と呼ばれ、目に入ってきた光を屈折させ、それぞれの距離へピントを合わせる機能を持ちます。
現在、眼内レンズの素材は柔らかいアクリル製のものが一般的になっており、レンズを折り畳んだ状態で目の中に挿入することができます。
折り畳むことによって、挿入する際の切開創は約3mmと非常に小さくなるので、目への負担を減らすとともに、術後の創口からの感染症リスクを最小限に留められることがメリットです。

眼内レンズの種類

眼内レンズの種類は、保険診療の「単焦点眼内レンズ」と選定療養または自由診療の「多焦点眼内レンズ」の2種類に分かれ、主にピントの合う焦点距離の数に違いがあります。

単焦点眼内レンズ

「遠・中・近」のいずれか1点のみにピントが合う焦点距離を設定できる眼内レンズです。
健康保険が適用される保険診療であることから、白内障手術で基本的に使用されるレンズです。

メリット

設定した焦点距離を見る場合は鮮明に見える
眼内レンズの中では最もシンプルな構造で、焦点を絞っているため、ピントが合う距離では本来の水晶体に近い自然な見え方になります。

デメリット

・設定した焦点距離以外を見る場合はメガネ・老眼鏡の装用が必要になる
単焦点眼内レンズの場合はピントが合うのが1点のみになるので、設定していない焦点距離では、メガネや老眼鏡を使用することになります。
例えば、遠くに焦点を設定した場合、近くを見る際に老眼鏡の装用が必要で、近くに焦点を合わせた場合、遠くを見る際にメガネの装用が必要です。

多焦点眼内レンズ

単焦点眼内レンズのデメリットを克服し、2点以上の焦点距離にピントを合わせることができる眼内レンズです。
メガネや老眼鏡の装用頻度を減らし、なるべく裸眼で生活したいという患者さまの要望に応えることができます。
一方、複数箇所へのピント調整を可能にするために複雑なレンズ構造が取り入れられていることから、多焦点眼内レンズ特有のデメリットがあります。

メリット

・日常生活でのメガネ・老眼鏡の装用機会が減る
水晶体によるピント調整機能がなくなった状態でも、複数の焦点距離にピントを合わせることができます。
レンズの種類によっては裸眼での快適な生活が可能になります。

・白内障の治療だけでなく、屈折異常の改善ができる
近視などの屈折異常や老眼など、患者さまが抱えている見え方のお悩みを解消することを目的として、レンズを選択することが可能です。

デメリット

見え方の質の低下
微妙な色の違いを識別する目の能力である「コントラスト感度」が低下することで、見え方の質が落ちたように感じます。
例えば、細いマジックペンのようにくっきり黒い文字が、鉛筆で書いたかのような文字に見え、くっきり感としては低くなるような状態です。
多焦点眼内レンズは目に入ってきた光をそれぞれの焦点距離に振り分けることで、複数距離にピント調整が可能ですが、振り分ける際に光エネルギーの消失が発生します。
これを「光エネルギーロス」といい、多焦点眼内レンズでコントラスト感度が低下する原因の1つとなっています。
また、現在では「光エネルギーロスがゼロ」なタイプの多焦点眼内レンズもあります。

・異常光視症の発生
眼内レンズでは光に輪がかかったように滲んで見える「ハロー」や、光がぎらついたように眩しく感じる「グレア」などの異常光視症が現れます。
単焦点眼内レンズでも基本的には発生しますが、多焦点眼内レンズの方が異常光視症の自覚症状を強く感じやすいです。
多焦点眼内レンズが持つ構造の複雑性が異常光視症を強く感じやすい原因の1つとなり、挿入したレンズの種類や人によって度合いが異なります。
また、眼内レンズを挿入して1年ほど気にならないレベルまで落ち着くケースがほとんどです。

治療費用が高額になる
保険が適用される単焦点眼内レンズと比較し、多焦点眼内レンズは基本的に「保険適用外」となるため、患者さまの費用負担は大きくなります。
多焦点眼内レンズには「選定療養」と「自由診療」の2種類があります。
選定療養とは厚生省に認可された多焦点眼内レンズに適用され、手術費用は保険診療、レンズ費用は自己負担となります。
自由診療の眼内レンズは機能性が高く、海外での評価が高いものが多いですが、完全自己負担の自由診療となるため、患者さまの費用負担は大きいです。

眼内レンズごとの見え方の違い

眼内レンズごとの見え方の違い

日常の中の焦点距離

日常の中の焦点距離
日常の中の焦点距離

眼内レンズを選ぶ前に知っておきたいこと

前項で解説した単焦点・多焦点眼内レンズそれぞれの違いを踏まえた上で、眼内レンズの選択方法について解説します。
まずはじめに、眼内レンズを選択するにあたり、以下を前提として知っておきましょう。

単焦点眼内レンズ、多焦点眼内レンズのどちらか一方の眼内レンズに優位性があるというわけではない

単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズはどちらが優れているというわけではなく、患者さまのライフスタイルに合わせて総合的に判断する必要があります。
白内障手術で使用する基本的な眼内レンズは「単焦点眼内レンズ」で、多くの患者さまが見え方に関しては満足されています。
一方、多焦点眼内レンズは近視などの屈折異常や老眼など、見え方のお悩みに合わせても選択することができ、白内障の治療に加え、これらの不便・不満を解消できる機会となります。

デメリットを理解する

多焦点眼内レンズは単焦点眼内レンズの焦点距離数におけるデメリットを克服している点ではメリットが大きいですが、レンズ構造の複雑性から相応のデメリットが伴うことがあります。
このデメリットについて十分に理解しないまま、多焦点眼内レンズを選択してしまうことが、術後の見え方に不満を抱えてしまう原因の1つとなり得ます。

妥協点を予め決めておく

どういった機能性や見え方を重視するかという優先事項を決めるのは勿論ですが、予め妥協点をしっかりと抑えておくことが大切です。
現在の医療技術では、人工の完全な水晶体は開発されていなく、眼内レンズによって水晶体の働きを全て補完することができません。
このことを念頭に入れた上で、ライフスタイルを考慮して優先順位と併せて妥協点を決めましょう。

眼内レンズの選び方

眼内レンズを選択する際に患者さまのライフスタイルの中で何を重視するか、主に3つの観点から解説しています。
この項で解説するのはあくまで目安ですので、手術を行う医療機関にて検討する際の参考にしていただけますと幸いです。

見え方の質を重視する方:単焦点眼内レンズ

眼内レンズの中では最もシンプルな構造で、焦点を絞っているため、ピントが合う距離では本来の水晶体に近い自然な見え方になります。
しかし、メガネや老眼鏡が必要になることに対しては妥協しなければなりません。

メガネや老眼鏡の装用頻度を減らす、
裸眼での日常生活を重視する方:多焦点眼内レンズ

日常生活でのメガネ・老眼鏡の装用頻度が減り、白内障手術による症状の治療だけでなく、近視などの屈折異常や老眼の改善ができます。
しかし、多焦点眼内レンズの構造の複雑性から、見え方の質が低下するといったような特有のデメリットにも目を向けなければなりません。

スポーツや料理等の趣味や仕事での
機能性を重視する方:多焦点眼内レンズ

スポーツでは特に中間から遠方のそれぞれの距離へのピント調整が短時間の間に繰り返して必要になることが多いです。
例えばゴルフでは、ショット時にボールを打つ瞬間(中間)から、打ち放ったボールの軌道を目で追う(遠方)という一連の動作があります。
このような動作に対して、メガネを使用せず、複数の距離へスムーズにピント調整を行うことができる多焦点眼内レンズの方が有利になるでしょう。
また、料理や農作業等で「湯気や汗が出てメガネが曇る」「ヘルメットを被る際にメガネが煩わしい」といった理由をはじめ、仕事や趣味で近くも遠くも交互に見る必要がある方に選ばれることが多いです。

まとめ

眼内レンズの選択は老後のQOL(生活の質)に大きく関わってきますが、眼内レンズは一度挿入すると安易に摘出することはできません。
術後に後悔しないためにも、それぞれの眼内レンズの特性を知った上で、患者さまご自身のライフスタイルに合わせて選択することが重要です。当院では、単焦点眼内レンズから選定療養・自由診療の多焦点眼内レンズまで揃え、幅広い患者様ニーズに応えられる体制を整えています。
累計1万件以上の白内障手術の実績と多焦点眼内レンズを用いた症例にも豊富な経験を持っている医師をはじめ、眼内レンズに精通したスタッフが複数名在籍しております。
患者さまのライフスタイルに関しての詳細なアンケートにご協力いただいた上で、医師やスタッフによる丁寧なヒアリングの元、患者さま1人1人に合わせたカスタムメイドの医療を提供させていただきます。

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この記事の監修者
院長先生の写真
医療法人七彩
理事長 本間 理加 医師
これまで大学病院に長く従事し、白内障手術をはじめとして、網膜硝子体手術、緑内障手術、眼瞼下垂、角膜移植など様々な眼科手術に豊富な執刀実績を持ちます。現在医療法人七彩の理事長として川越エリアを中心として手術に特化した眼科クリニックを2医院展開しています。

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