白内障手術の痛みは?麻酔方法について解説
水晶体が白く濁って視力に影響が現れる「白内障」に対する「白内障手術」は現在の外科治療の中で最も身近な手術です。
現在では白内障手術の術式(手術方法)が確立され、体への負担の少ない「低侵襲」な手術となっており、ほとんどの眼科施設において日帰り手術が実施されています。
実際に、現在国内では年間160万件以上が実施され、非常に多くの方が白内障手術を受けています。
ほとんどの方が将来的に白内障手術を受けますが、中には「内眼手術(目の中の手術)」ときいて、「手術中の痛み」を想像し、不安になる方が多いのではないでしょうか。
しかし、白内障手術は「局所麻酔」によって痛みはほとんどありません。
手術時間も短く、安全性が高いので、決して怖い手術ではないでしょう。
通常は局所麻酔で十分に効果はありますが、、痛みを感じやすい方や恐怖感が拭えない方に向けて、当院では「笑気麻酔」や「全身麻酔」も採用しています。
今回は白内障手術への痛みについて、それぞれの麻酔方法のメリットやデメリット、安全性・副作用について解説します。
目次
白内障手術とは
白内障手術とは、白く濁った「水晶体」を摘出し、ピント調整機能を持っている水晶体の代わりとなる人工の「眼内レンズ(単焦点・多焦点眼内レンズ)」を挿入する手術です。
手術方法の確立や医療設備の発展によって、手術の際の切開創は「約2.4mm」と非常に小さく、体への負担が最小限の「低侵襲」な手術となっています。
そのため、基本的には手術日にご帰宅いただける「日帰り手術」が多くの医療機関で行われています。
手術時間は5〜10分程度と短く、術後は院内で30分ほどの安静時間をお過ごしいただいた後、ご帰宅いただけます。
白内障手術の流れ
1
洗眼・点眼
2
局所麻酔
局所麻酔のため、意識がある状況下のもと手術を行います。
3
切開
さらに水晶体嚢(水晶体を包む袋)の前面に丸く切れ目を入れます。
基本的には術者が顕微鏡で手元を見ながら作業を行いますが、施設によってはレーザー機器を用いて行っています。
4
水晶体の摘出
5
眼内レンズの挿入・固定
6
点眼して終了
白内障手術の痛みは?
白内障手術で用いる眼内レンズは目の中に折り畳んだ状態で挿入できることもあり、手術時の切開創は「約2.4mm」と非常に小さいです。
そのため、点眼による局所麻酔だけでも痛みの観点からは効果は十分にあります。
実際、白内障手術を受けた患者さまより「ほとんど痛みを感じなかった」と手術後にコメントいただきます。
しかし、局所麻酔のため、意識のある状態での手術となります。
患者さまの中には、手術への恐怖心や不安が拭えない方も見受けられます。
また、認知症などを患い、手術中の静止状態を維持できず、スムーズな手術を行えないケースもあります。
このような方には「笑気麻酔」や「全身麻酔」での白内障手術という選択肢がありますので、次項にてそれぞれ紹介します。
笑気麻酔とは
笑気麻酔とは、「笑気(亜酸化窒素)」と呼ばれるガスを鼻から吸入しながら治療を行う麻酔方法です。
笑気ガスには、軽い鎮痛・鎮静作用、心拍数や呼吸などを安定させる作用があり、痛みだけではなく恐怖心や不安感を和らげることができます。
笑気麻酔の鎮静作用は、ウトウトとして眠っている状態に近くなるため、意識は失うことなく、患者さまに呼びかけると応答してくださいます。
笑気麻酔によって、リラックスした状態で白内障手術を受けていただけます。
笑気麻酔のメリット・デメリット
- 軽い鎮静・鎮痛作用がある
- 恐怖心や不安感を和らげる
- 術後に麻酔が効いた状態から覚めるのが早い
- 吸入した笑気ガスは自然と体外へ排出される
- 呼吸が抑制されるリスクがない
- 人によって鎮静・鎮痛作用の効果が異なる
- 呼吸器疾患(喘息など)や鼻に関する疾患のある方は効果が減弱する可能性がある
- 効果が充分に発現するには数分かかる
安全性や副作用について
笑気麻酔は、小児歯科治療や無痛分娩にも用いられ、安全性が認められている麻酔方法です。
笑気ガスには毒性はないため、副作用はほとんどありません。
一般的に体内に入った薬剤は主に肝臓で分解されるため、肝臓に大きく負担がかかり、副作用が現れることがあります。
対して、笑気ガスは体内で分解される前に体外へ自然と排出されるため、副作用が少なく使用後の回復も早いことが特徴です。
全身麻酔とは異なり、肺や心臓などへの負担もないため、多くの患者様がご使用いただけます。
また、全身麻酔器であれば濃度調整が容易に行えます。
一般的低濃度笑気器は30%までですが、当院では70%までコントロール可能です。
笑気麻酔の流れ
1
笑気ガスを鼻から吸入
はじめは酸素だけを流し、鼻呼吸ができていることを確認後、徐々に笑気ガスの濃度を上げていきます。
深呼吸をするように、ゆっくりと深く呼吸をしていただきます。
2
笑気ガスの濃度を上げます
「フワフワした心地」、「ウトウトして音が遠くで聞こえてくる」 、「お酒に酔ったような気持ちの良い状態」
3
吸入をしたまま手術を進める
4
手術後の安静
笑気ガスは時間と共に自然に体外へ排出されるため、通常の白内障手術後と同様に院内でお休みいただいた後、眼帯をしてご帰宅いただきます。
全身麻酔とは
全身麻酔とは、麻酔によって意識をなくすことによって、苦痛や恐怖心を取り除ける麻酔方法です。
笑気麻酔などの「鎮静作用」とは異なり、全身麻酔では意識がなくなり、患者様に対して呼びかけても反応されない状態です。
また、手術中の身体の動作を抑制できるため、安全にスムーズな手術を行えます。
手術への恐怖心や不安が大きい方や、認知症の高齢者など長時間の静止を保てない方にも有効的な麻酔方法となります。
全身麻酔のメリット・デメリット
- 意識がなくなるため、術中の痛みや不安を感じない
- 静止状態の保てない方でも身体の動きを抑制してスムーズに手術ができる
- 事前に全身状態の検査(レントゲンや心電図、血液検査など)が必要
- 手術前の絶食期間がある
- 治療後の安静時間が必要
- 心臓や肺に関する疾患のある方は適応不可の場合がある
- 治療中に全身状態の観察が必要
- 全身麻酔導入や薬剤による副作用や合併症のリスクがある
全身麻酔の流れ
1
モニター機器の装着
また、麻酔薬の投与および水分確保のために点滴を行います。
2
麻酔の導入
口から喉へ挿管チューブ、またはラリンジアルマスクを挿入し、手術中の呼吸を人工呼吸により補います。
3
手術開始
全身麻酔では手術終了まで意識がない状態を維持させるので、途中で覚めることはありません。
4
手術終了
意識が覚醒するまでの間も麻酔が浅くなり、手術室内の音やスタッフの声が徐々にきこえてきます。
5
覚醒
6
帰宅まで
安全を確認した後に手術室を出て、リカバリールームで休んでいただきます。 完全に意識が覚醒し、ご自身で歩ける状態でなった後、ご帰宅いただきます。
全身麻酔の安全性や副作用について
手術中は患者さまの呼吸や血圧、心電図など全身の状態を確認しながら、状態の変化に応じて麻酔医師が処置を行います。
そのため、執刀医と麻酔医の2名以上の医師の対応のもと手術を行う必要があります。
現代の現在麻酔は、麻酔器や麻酔薬、モニター機器の進歩により、非常に安全となっています。
しかし、重篤な合併症を引き起こす可能性はゼロではありません。
医療機関として術前の検査によるリスクの査定や麻酔計画による合併症の予防、手術中の全身状態の観察などは必要不可欠となります。
また、万が一合併症が発生した場合でも、迅速かつ最善の対応を求められます。
以下、想定される副作用です。
・吐き気・嘔吐
・のどの痛み、声がかすれる
・寒気や発熱
まとめ
白内障手術は点眼による「局所麻酔」によって痛みはほとんどなく、短時間で終わる安全性の高い手術です。
痛みを感じやすい方や恐怖感が拭えない方には「笑気麻酔」や「全身麻酔」という方法もあります。
笑気麻酔は、意識がある状態で、恐怖心や不安を軽減し、リラックスした状態で手術を行えます。
全身麻酔は、意識がない状態で、痛みや恐怖心を感じることなく、身体の動きが抑制されるため、どんな方でもスムーズに手術を行えます。
特に全身麻酔の場合、副作用や合併症の可能性があるので、医師と十分なコミュニケーションを取り、理解を得た上で手術を受けることが大切です。
白内障手術に対する不安や恐怖心を払拭できない方や、長時間の静止を保てない方が白内障手術を検討する場合は、それぞれの麻酔方法に対応し、安心して任せられる医療機関を選びましょう。
当院でも患者様のご希望に応じて「笑気麻酔」や「全身麻酔」での手術に対応しております。
これまで白内障手術について1万件以上の執刀実績を有する当院院長が、患者さまのご希望をヒアリングした上で、どちらの麻酔方法が患者様に適しているかをご提案・ご説明させていただきます。
月に1度、院長と麻酔医による「全身麻酔」での白内障手術を行っておりますので、気になる方はお気軽にご相談やお問い合わせください。
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理事長 本間 理加 医師
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