白内障手術は入院の手術か日帰り手術どちらが良い?
白内障手術は、国内で最も身近な外科手術の1つで、実際に年間160万件以上が実施されています。医療技術の進歩と共に安全性が確立され、体への負担が少ない「低侵襲」な手術となったことから、多くの医療機関で「日帰り手術」が行われています。
日帰り手術は手術後即日に帰宅いただける「利便性」がメリットとして大きいです。
もちろん、患者様によっては「入院での白内障手術」という選択肢も有効的で、中には入院が必要となるケースもあります。
この記事では白内障手術において入院の手術を行うケース、入院での手術と日帰り手術のそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
目次
白内障手術とは
白内障手術とは、白く濁った「水晶体」を摘出し、ピント調整機能を持っている水晶体の代わりとなる人工の「眼内レンズ(単焦点・多焦点眼内レンズ)」を挿入する手術です。
術式の確立や医療設備の高性能化によって、眼内レンズを挿入するための切開創は「約3mm」と非常に小さく、体への負担が最小限の「低侵襲」な手術となっています。
手術時間は片目10〜15分ほどのため、基本的には手術日にご帰宅いただける「日帰り手術」が多くの医療機関で行われています。
日帰り手術が一般的になる以前は、白内障手術後は1日2回の抗生物質の点滴が必要であったため、入院での療養期間が必要でした。
しかし現在では、抗生物質が目薬での点眼で済むようになったため、日帰り手術が主流となっています。
白内障手術において入院を行うケース
日帰り手術でも入院での手術も基本的に「手術の内容や術後の処置」は変わりません。
入院が必要な患者さまもいらっしゃいますが、手術を行う医療機関によっては入院か日帰りかは患者さま自身で選択できます。
例えば、日帰り手術の場合、手術日当日だけでなく、翌日に検査のための来院が必要になります。
そのため、「医院への通院頻度」などといった理由から、入院を選択するケースがあります。
安全性を第一に考慮し、ご自身の心身に最も負担がかからない方法を選択するのがベストでしょう。
以下、入院を行う具体的なケースについて紹介します。
ご高齢の方や、身体に不自由があり通院に困難を要する場合
日帰り手術の場合、手術日当日だけでなく、翌日に検査のための来院が必要になります。
ご高齢の方や身体に不自由の方の場合、通院にかかる体力や負担が大きくなります。
また、白内障手術は片目ずつの手術が基本となっているため、手術日+術後の通院が2セット分(2眼分)かかります。
そのため、通院への負担を減らすことを目的に「入院での白内障手術」という選択肢があります。
遠方から手術施設へお越しいただく場合
手術自体は十数分程度で終わりますが、術前の処置や術後のリカバリータイムで1日の大半をクリニックで過ごすこととなります。
白内障手術は体への負担が少ない手術ですが、手術である以上、心身へのストレスがありますので、その分体力を要します。
そのため、遠方からお越しいただく場合、ご帰宅が遅くなるだけでなく、翌日も検査来院が必要になるため、「入院での手術」という手段があります。
付き添い人が不在で、術後のご帰宅が不安な方
白内障手術後当日は手術した目はぼんやりとしていて、はっきり見えません。
白内障は両眼とも発症しているケースが多く、もう片方の手術をしていない方の目も白内障で視界が霞んでるなどの症状が出ていることもあります。
両眼がはっきりしていない状態での、ご帰宅はクリニックの近隣ではない限り、危険が伴うので、基本的には付き添いの方の同行が必要です。
しかし、付き添いの方の都合が合わない等の理由がある場合、入院によって視力が落ち着くのを待ってから、ご帰宅いただくという方法があります。
他の病気がある方
低侵襲で安全性の高い白内障手術ですが、他の目の疾患や身体に重篤な疾患がある場合は、身体へ負担や合併症のリスクが高まります。
そのため、他の病気をお持ちの方は、術後に体調の変化があった場合にすぐに対応できるよう、入院での手術が基本となります。
加入している保険の制約
患者さまが任意でご加入している民間の医療保険の場合、入院にのみ保険が適用される場合があります。
そのため、費用的な観点で、日帰りでなく入院での白内障手術を選択するケースもあります。
入院の白内障手術の注意点
・費用について
入院の場合は「入院費」が発生します。
入院費は一部保険が適用され、「差額ベッド代」や「食事代」は自己負担となります。
ただし、高額療養費制度によって、個人の年齢や所得によって定められている「上限額(自己負担限度額)」までの負担で抑えることができます。
白内障手術における高額療養費制度については別の記事で解説していますので、詳しくは下記よりご覧ください。
・慣れない入院環境
入院の方が安心して過ごせると思い入院手術を選択される方もいらっしゃいますが、実際は慣れない入院の環境に動揺する方も少なくありません。
特に白内障手術後は片目が見えにくい状態ですので、いつもと違う環境で過ごすことは想像以上にストレスを伴います。
また、術後は視界がはっきりしていないため、住み慣れていない環境下では転倒や身体を壁や家具にぶつけてしまうことも起こるでしょう。
入院手術と日帰り手術のメリット・デメリット
入院での手術と日帰り手術の双方のメリット・デメリットを考慮し、患者様ご自身の心身に最も負担がかからない方法を検討しましょう。
入院手術のメリットデメリット
- 通院回数が減る
- 術後の生活の補助が受けられる
- 他の身体の病気を持っている場合でも術後に安心して過ごせる
- 入院費用がかかる
- 慣れない入院環境でのストレス
日帰り手術のメリット・デメリット
- 手術を受けた当日に帰宅できる
- 日常生活やお仕事への早期復帰
- 手術日のスケジュール調整がしやすい
- 準備や手続きが比較的少ない
- 費用負担を最小限に抑えられる
- 視界がはっきりしていない状態で帰宅しなければならない
- 手術当日だけでなく、翌日に術後検診による再来院が必要
- 術後のご帰宅に付き添い人が必要
まとめ
現在では「日帰り白内障手術」の実施件数が全体の過半数となっておりますが、入院による白内障手術が最適なケースもあります。
どちらの方法でも手術方法は変わりませんが、術前・術後において、それぞれの方法にメリット・デメリットがありますので、ご自身の心身に最も負担がかからない方法を選択するのがベストでしょう。
また、通院回数の観点から入院での手術を検討されている場合は白内障の両眼同時手術が有効な手段となるケースもあります。
白内障手術は片眼での手術が基本となっていますが、両眼手術を行うことで、「通院回数を減らすことができる」などといったメリットがあります。
当院では日帰り白内障手術を実施しており、患者様のご希望に応じて日帰りでの両眼同時手術に対応しております。
※入院をご希望される場合は連携施設にご紹介させていただきます。
当院院長は白内障手術について1万件以上の執刀実績を持ち、様々な症例に対して豊富な経験を有しております。
患者さまのご希望や全身の状態をヒアリングした上で、どちらの手術方法が患者様に適しているかをご提案・ご説明させていただきます。
また、滅菌・消毒を徹底した清潔な手術室を維持し、感染症のリスクを最小限に抑える取り組みを行うなど、患者さまがより安心して手術を受けられる環境を常に整えています。
白内障手術の手術方法ついてお悩みの方やご検討中の方はお気軽に当院へご相談くださいませ。
理事長 本間 理加 医師
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